今は元気だからまだ大丈夫―そう思っていたら突然のけがや体調不良で介護されることになった、なんて話は少なくありません。だからこそ「どのような老後を送りたいのか」「介護状態になったらどうするか」などを家族も含めて話し合っておきたいものです。そこで大事になってくるのが「財産管理」です。
家族信託は、契約で親の財産の管理などを子に託すことができます。不動産や預貯金を持つ親と、管理を託される子の間で柔軟な財産管理ができます。
親が元気な間は何ら問題となりませんが、認知症等で判断できなくなると、親の代わりに判断する人を家庭裁判所で決めることになります。この代理人を成年後見人と言います。
成年後見人は、ご本人の財産と生活を守ることを優先するため、ご家族の希望する柔軟な財産管理ができないことが多くなります。中でもハードルが高いのが自宅の売却です。自宅は、ご本人の生活の拠り所で、ご本人に及ぼす精神的な影響が大きいとされているからです。さらに、家庭裁判所は、居住中の自宅だけでなく、施設入所して帰る見込みもない空き家となった家、過去に自宅として住んでいた家も自宅に含むとしており、売却のハードルをより高くしています。
そのため、親が元気な間に子に財産管理を託すことを決めて、家族信託契約することがお勧めです。これにより、託された財産の手続きは子が行います。信託契約により、手続きする人は子に代わりますので、親の判断能力が低下しても問題ありません。売却など不動産の手続きは、書類も多く複雑ですので、元気な間から手続きを代わってもらえるのも大きなメリットです。お元気なうちから信頼できる家族に財産管理を任せてみませんか?
手続きなど何もしない間に親の判断能力がなくなった場合、家庭裁判所で成年後見人を選任します。成年後見人の約80%は司法書士や弁護士などの専門職が選任され、専門職の後見人には毎年、報酬を支払うことになります。また、自宅売却をはじめ、ご本人の財産管理については家庭裁判所の許可や事前相談が必要な場合がたくさんあります。このように親の財産について家庭裁判所が関与する手続きは多くなります。
では、実際に家族信託をした方は、どういった経緯で検討し、どういった相談をしたのか事例をご紹介します。
事例01・・・空き家となった自宅を売却できました(福岡市東区/70代女性 Kさん)
Kさんが家族信託を相談したポイント
独身の姉は関西で一人暮らしでした。年に数回、私が掃除と様子見で往復していましたが、福岡で一緒に住むことになりました。姉の判断能力が低下すると、管理組合など姉の自宅マンションの手続きや金銭管理が難しくなると思い、家族信託をしました。姉は売却して良いと言っていましたが、私は姉が亡くなるまで自宅はそのままにしておくつもりでした。しかし、清掃や管理組合手続きなどで、年に何度も往復するのがしんどくなってきて、買い取りのチラシが気になるようになりました。信託手続きをしてくれた司法書士さんに相談したところ、私の判断で売却して良いと聞き、大阪の司法書士さんを紹介してもらい、家財整理業者や不動産屋さんも紹介していただき、スムーズに売却することができました。
事例02・・・修繕や建替えをタイムリーに判断したい(福岡市博多区/40代男性 Nさん)
Nさんが家族信託を相談したポイント
父が所有するビルの1階で店を経営しています。10年以内にはビルの大規模修繕や建て替えの検討が必要になりそうですが、父がこのまま元気でいてくれるかどうか不安でした。ネットで家族信託を知り、司法書士さんに相談しました。家族信託のメリットとデメリットについて、また成年後見など他の制度についても、司法書士さんから丁寧に説明してもらい、両親や兄弟と話し合って家族信託をすることに決めました。
家族信託は家族で財産管理を続けることができることも大きなメリットです。家族信託で託した財産は、託された子の判断で手続きができます。家庭裁判所の許可や事前相談は不要です。司法書士、弁護士などの専門職も選任されません。万一、親の判断能力の衰えや失われた場合でも、ご家族で安心して財産管理ができるのが家族信託です。1日でも早く検討しませんか。