誰もが年齢を重ねるにしたがって、心身の機能が低下していき、日常生活に支障を感じ始める時期がきます。そのような方の動きを助け、また機能訓練に役立つように考えられた用具が「福祉用具」です。福祉用具というと、車椅子や介護用ベッドを思い浮かべる方も多いと思いますが、少し不安を感じ始めている人のためのシューズや杖、歩行器など、身体の状態に応じて選択できるよう、たくさんの種類があります。
まさに「転ばぬ先の杖」となる福祉用具ですが、その使用や選定は、どのようにすれば良いのでしょうか。今号では「はじめての福祉用具」について、教えていただきます。
「歩く」「身体を支える」「立ち上がる」「起き上がる」といった日常動作に不安を感じることが増えてきたなら、福祉用具を使い始めるタイミングかもしれません。今回は入門編として、こうした日常の移動を支える福祉用具をいくつかご紹介しましょう。
…など
こんな方に
・スリッパやサンダルで、つまずくようになった
・素足で歩いていて滑りやすくなった
・(かがんで)靴ヒモを結ぶのが困難になった
・足がむくんで、靴サイズが合わなくなってきた
「ケアシューズ」は、歩きやすくて転倒予防に役立つさまざな工夫を施した福祉用具。左右で異なるサイズを購入できるど、配慮も細やかです。屋外はもちろん室内向けもあります。
こんな方に
・伝い歩きはできる
・自立歩行では、転倒するおそれがある
「一本杖(棒状の杖)」は、安定性が十分ではありませんが、ホームセンター等でも安価に販売されており、お試ししやすい杖です。一本杖では不安定な場合、杖先が3~4点に分かれた「多点杖(多脚つえ)」を検討します。多点杖は、形状や重さ等、様々なバリエーションがあり、選定が難しいため、専門家と相談しながら選びます。
こんな方に
・杖を使用していても転倒しそうになった
・伝い歩きはできるが、自立歩行が難しい
屋外用の歩行器には、荷物を入れることができたり、疲れたら座ることができたりするタイプもあり、屋外での行動範囲が広がります。また屋内用にも軽量タイプの持ち上げ型や、キャスター付きなど、種類が豊富にあり、状態に合わせて選ぶことができます。
こんな方に
・ベッドからの起き上がりが難しくなった
・トイレや玄関、お風呂での動作で、体重を支えてバランスをとるのが難しくなってきた
設置工事が不要なタイプの「手すり」には、床と天井を利用する「突っ張り棒型手すり」、置くだけで設置できる「床置き型の手すり」があります。いずれも種類が多いため、専門家に相談をしながら選定しましょう。
現在介護保険サービスを利用中かどうかに関わらず、「福祉用具専門相談員」等の専門家に相談することをおすすめします。福祉用具のプロが使用者にあった適切な福祉用具を選んでくれるので、安心して使うことができます。介護保険サービスを利用中の方は、担当のケアマネージャーにお願いすれば、コーディネートをしてくれます。
なお、福祉用具の入手は「購入」か「レンタル」になりますが、今回ご紹介しているケアシューズや一本杖等の介護保険が利用できないものは、自費で購入することになります(右図)。これらは一般の店舗やネット通販でも購入できますが、将来的なことも考えて、はじめから専門家に相談をするのが良いでしょう。
介護保険を使ってレンタルが可能な福祉用具には、今回ご紹介している多点杖や、歩行器、手すりの他、車椅子や特殊寝台、移動用リフトなどがあります。いずれも自費で購入した場合よりも費用的なメリットは大きくなります。
また、レンタルなので、用具のメンテナンスや選び直しができるのもポイント。例えば、脳卒中などの急性発症性疾患によって、一度急激に日常生活動作(ADL)が低下してしまったケースでは、退院後に回復が進むことが多いので、適切な福祉用具も短い期間で変わってきます。このような場合に、都度、専門家と相談をしながら選び直すことができます。
なお、要介護認定の区分によって、レンタルが可能な福祉用具は変わります。
原則として65歳以上の方で、要支援・要介護の認定を受けた方が介護保険サービスを利用できます。まずは要介護認定を受けるため、最寄りの「地域包括支援センター」(福岡では、「いきいきセンターふくおか」)や、介護保険事業所のケアマネージャーにご相談ください。
新栄グループなら、福祉用具についてはもちろん、介護保険の利用や住宅改修のお悩みなど、幅広く相談いただけます。何でもお気軽にご相談ください。